高校野球 県予選決勝戦

母校が決勝戦の一回裏にいきなり4点とられている。というので、15分歩いてスタジアムへ。在学中は、結局一度も母校の高校野球を観なかった。わたしの高校は全国大会に進まないと部活動と認めない。という規則があるらしく、たいていの運動部は全国大会に出て、そのいくつもが全国優勝をしていた。だから周りの知り合いが運動で進学したりプロになるのも「へえ」という普通の感覚だった。
わたしが高校に入るときに変更になった入試制度のせいで、運動をする人。勉強をする人。どのどちらもしない人。という分業制が出来ていた。3年で終わってしまった制度だったが、中にいた者からしてみれば、これはこれで成功だったかもしれない。あの頃のわたしは、ロックばかり聴いて、名画座に毎週通って、本を毎日読んでいた。と、驚くくらいそんな毎日は変わっていない。
久々の野球観戦は楽しかった。ブラスバンド部を見て、わたしがホルンの音に弱いのは、このせいだったのだと膝をうつ。ベンチに入れなかった100人くらいの野球部員の絶叫応援。彼らは、この瞬間がもうとりかえしのつかないことだと知っている。そして、あの時も今もこれからも、わずかな運命の一振りで、大きく変わってしまう人生。それは野球場の上で何度も賽子がふられているようでもあるのだけど。今は、このときでしかないのだけど。実はサイコロは、それから何度も。毎日に何度も振られていることを、わたしも知らなかった。
結局、決勝戦は5対1で負ける。選手も応援も、全てが終わってしまったような顔が見れる。何も終わったわけではなくて、これからも延々と日常が続いて行く、なんてことを今説明できる人は誰もいない。