野ブタ。をプロデュース

今回の芥川賞を最後まで阿部和重と争ったという、白岩玄の「野ブタ。をプロデュースISBN:4309016839 は、つまらないわけでもなく。ふんふんふん。と、読み終えてしまえる物語だった。新人の小説として、こういう小説が出てくることはいいことだし、この小説が芥川賞をとれば、もう少し話題になって売れたかもしれないし。それはそれで少しも悪いことではない。ただ。と思うのだ。純文学がどういうものか知らないが、満員電車の中や、お風呂の中の退屈しのぎにはなるのかもしれない。起承転結のお話はあったのだけど、この小説のどこにも、匂いや感触のする人が出てこなかった。まるで漫画雑誌の新人賞受賞第一作のような。どこかで知っている人たちが出てきて、あっさりと読み終わってしまって、次の日には読んだことすら思い出せないような。と、そこまで文句を言う必要がないのだけど、なんといっても最後のお話の終わらせ方が「そりゃないよ」としか、言いようのない終わらせ方。主人公の闇を描いているようで、最後にきて教育テレビの青春もののような終わらせ方にはおどろいた。