彼女からの手紙

君が毎朝出かけるとき、私は寂しくないような顔をして見送る。私はプライドが高いから。
君がトイレに入るとき、私はトイレの隙間から手を入れる。隙間から出してくれる君の指と触れ合うのが、一番適切な距離に思うから。
君が夜遅い時間に帰ってくるとき、私は嬉しい顔をしないで迎える。私はプライドが高いから。
君が紙を放り投げるとき、私は全力で走って取りに行く。その姿を君に見せたいから。
君が扉を閉めて自分の部屋にいるとき、私は扉に腹をつけて横になっている。扉をひっかきたい気持ちを君に知られたくないから。
君がテレビを長い時間見ているとき、君の周りを走り回る。私がここにいるのに無視されているようだから。
君が私の毛を梳かしてくれるとき、私はじっとして目をつぶる。それがずっと続いて欲しいと願っているから。
君がごはんを食べているとき、私はテーブルに上がる。君が何を食べているのか心配だから。
君が具合の悪いとき、私は君の近くでうろうろする。私が何も役に立たないことを知られたくないから。
君か私かどちらかが先に死ぬとき、私は寂しくないような顔をする。私はプライドが高いから。