半額なら何でも食っとけ(ぶろぐぺっとのさだきちWROTE)

Shipbuilding2007-05-16

わたしが食事をする隣には古い冷蔵庫があって、その冷蔵庫にメモが磁石で貼られている。「1997年スイカ」と書かれたメモには正の字が書かれていて、その年は14個の西瓜を食べたことを意味している。それが「1998年スイカ」から毎年正の字は減り続けていて、2002年には分数のたし算となっているのは、一個で買うのをやめた年だからだ。その年にわたしは産まれ、西瓜を丸ごと食べなくなった夏にわたしは彼の家にやってきて、冷蔵庫の横に住みついた。かれは、毎朝わたしの食器にごはんを出して、どこかにいなくなり、暗くなってどこからかあらわれては、またごはんを出した。
この家に来て1年がたったころ、わたしのおしっこに血が入っていることに気づいた彼はわたしを医者へ連れて行った。そこでは、たくさんの動物と人が椅子に座っていた。かれのとなりに座った老夫婦は毛布の上に寝かせた年老いた雌犬の頭を何度も撫でていた。そして診察室に入ったきり彼らはいつまでも出てこなかった。それから、わたしはかれに好かれないように注意をはらって毎日を生きることにした。その2003年は、かれが全く西瓜をたべなかった年だ。それから4年間、西瓜を食べない年がつづいたが、わたしはずっとかれに好かれないように注意をはらって毎日を生きていた。
そして今日、4年ぶりにかれが半額になっていた1/8カットの西瓜を買ってきて、その1/3を食べてひときれをわたしの口に入れて、残りを冷蔵庫にしまった。西瓜は甘かった。
今朝もわたしは間抜けな顔で寝ている彼をしばらく見下ろしていた。それからかれに気づかれないように肉球でそっと彼のほほをたたいてかれを起こした。布団を畳もうとすると、ふとんの上に転がって、わたしの体を持ち上げる運動をさせた。布団を押し入れにしまうときには、押し入れの中に駆け込んで彼をいらいらさせた。彼がトイレに入ったらば、扉の隙間から手を入れて構ってほしい合図をした。トイレの扉越しにわたしは紙屑を中に入れて彼が外へ出せるように遊んでやった。トイレの扉越しにわたしたちはお互いの指をなであい、そしれかれの指を深く噛んだ。彼がなかなか取れないようにうんちはできるだけバラバラに砂の中に深く埋めた。
そんなふうに、わたしはかれに好かれないように全力の注意をはらってねこの毎日を生きているのだ。
■このエントリは、ブログペットの「さだきち」が書きました。