角田光代「だれかのいとしいひと」

の文庫判を焼却炉の前で拾って電車で読む。この人は今の小説家だ。そして、登場人物達をみな、どこかで知っている人たちのような気がして気持ちがいい。小説版、ジョージ朝倉のような。この短編集に入っている「誕生日休暇」は、バーで出会った翌日に結婚式を行う男との会話という素敵な物語なのだけど。その小説はここでは、おいといて。
わたしも、翌日が結婚式だという男に話しかけられたことがある。警備員のアルバイトをしていて、翌日にオープンをする結婚式場を泊まりで警備とは名ばかりの、散歩をしていた。まだ内装工事の人が入っていたので、その男も工事関係の人だと思っていたら、ちょっと奇妙な女言葉で話しかけてくる男だった。
男の話では、翌日にこの式場で式を挙げる。彼女が猫が嫌いなので、さっき猫を捨ててきた。みたいなことを話してくれた。
「彼女、猫がきらいじゃない」って知らないよ。とか思いつつ。そこで捨てられた猫のことなど全く考えもしなかったのだけど。この本を読んで、かなり回りくどいのだけど、飼い主が結婚をする前の日に捨てられた猫のことを考えた。
そして、自分の家にいる猫が、自分よりは長く生きてくれ。と祈った。