シルヴィア・プラス 「ベル・ジャー」ISBN:4309204015

シルヴィア・プラスの小説も詩も読む前から、どうしてこんなの彼女の伝記物*1が日本で多く出ているのか不思議だった。そして、なんとなくわたしは、小説「ベル・ジャー」が大のお気に入りとなって、それからひとつつづ彼女の自伝を漁るようになるような予感がしていた。が、予感は外れた。シルヴィア・プラスについてまわる、オーブンに頭を突っ込んで自殺したという彼女の生涯のあまりに簡単でドラマチックな説明をわたしは、濃い茶色のワンピースで長い髪を垂らした女性がオーブンに頭をつっこんでいる場面を想像していた。
そして、このあまりに自伝的な小説「ベル・ジャー」で生硬な文書で綴られる彼女の人生をのぞき読むことは、特に精神病院の生活になってから息苦しさを覚えた。こちらもまた精神的な余裕がない状態であったからか、ある種の精神的影響すら感じてしまうのだ。主人公を含めて登場人物全てが、善良なる人々であるが故のその裏面が描かれる。みんなが職業やその人の置かれた状況に差別意識を持って、
と、好きな部分を見つけられなかったところから一日たってパラパラと読み返すに、「ベル・ジャー」というつり鐘形のガラスの覆いの中にいると感じる彼女の生活を時には詩的に描きながらも丹念で精密なその描写は、彼女の部屋から病院からボストンへそして、世界中へ繋がらせている。これはおそらくフェミニスト的なテキストとして読まれるであろうけど、もっと単純でいとしいはずの「生き延びる」ことについての秘密を探させる。彼女自身が最終的にそれを見つけられなかったにしろ、間違いなくこの小説の中にはいくつもの鍵がこっそりと置かれていた。