少年王者舘KUDANpuroject「くだんの件」 ヒトとウシで件

プレステの中では一番面白かったかもしれない「せがれいじり」というゲームにヒトとウシの合の子であるクダンが出てきたのだが、あのゲームではじめてクダンを見たような気がする。そうあのくだんの件だ。
千葉県民にとって、横浜は海の向こうの国のように遠い印象を持つ。もう横浜に行くというのは、リュックにお菓子525円分を入れ込む覚悟が必要なくらいの遠征だ。が、実際は下北沢や中野の方がよほど遠かったりするのだが。それはそれだ。ということで、初めて訪れる横浜相鉄本多劇場。劇場の前の店で夕食を食べるが、バーのマスターのような人がピアノを弾いていた。店内は酒のメニューばかりの大人バーだったが、ピアノをやめてコルトレーンのBGMにしてくれてパスタを出してくれたが、最初から最後まで店には白いワイシャツにネクタイのマスター一人しか見かけない店だった。あれは原りょうではなかったのかと家で原りょうの写真を確かめる頃にはくだんのマスターの顔を忘れていた。
そして、少年王者舘の芝居はそれがKUDANpurojectの二人芝居となると、本公演と違って、より説明調になり、ある意味では、そのねじれた世界もわかりやすくどまん中の直球に見える。くだんの件では、夢なのか現実なのか誰の夢なのかという説明が入り、真夜中の弥次さん喜多さんでは、さらに薬中毒という解説による世界の分け方を説明してくれる。双方で芝居中に出前でピザとうどんを舞台に呼ぶだけでなく、双方の芝居が繋がっているところこそ、KUDANpurojectの現実世界と芝居との解説かもしれない。しつこくて愛らしいくりかえしの台詞は呪文のように響く。全てのセットが取られた舞台の、芝居の終わりでもあり、夢が醒めたあとでもあり、世界の終わりでもある静かなラストが美しい。そんな天野天街に呪いをかけられた者には、呪いが解けるまで、少年王者舘を見続けるしかない。