古川日出男

古川日出男の長編も短編も、その核のようなものに村上春樹の亜流的なものに感じてしまうのだけど、それがあまりに直截であった「中国行きのスロウ・ボートRMX」は、殆どであろうオリジナルを愛する読者にとって、読まなかったことにしよう感を与えてしまった。たしかに、古川日出男村上春樹のいくつかの小説のような読む人の奥底まで手を突っ込まれて冷たいものを握られたような感覚を与えたり、一生忘れないような物語を紡ぐような作家ではないかもしれない。それでも古川日出男の書く分厚い長編は小説として十分に読み応えがある。そんなところに、掌編を集めた「gift」は、これがまた気の抜け加減が、また村上春樹の気の抜け加減では絶頂期だった糸井重里との「夢で会いましょう」並だ。と、いちいち村上春樹と比べられて申し訳ない。特に最初の「ラブ1からラブ3」の凝りようと猫の使い方は、(自粛)。そして、「アルパカ計画」での脱力ぶりも、(自粛)。最後の「生春巻き占い」にいたってはどこからどこまでも、(自粛)。

gift  夢で会いましょう (講談社文庫)  中国行きのスロウ・ボートRMX (ダ・ヴィンチ・ブックス)