いくつもの橋をわたって

Shipbuilding2006-07-23

屋久島へ行くということは、観光旅行に行くということではなくて、何かを体のなかに通すことだった。とかいって屋久島のことを書く気持ちも少しはあったのだけど、今はマイナスイオンを吸い過ぎて気力と体力もマイナスに。ただそれは、年に一度あるかないかの特別なライブや芝居を観たときに、わたしは勇気をもらう方ではなくて激しくおちこむ質なので、きっとそんなわたしのタチのせいだ。わたしの前世がカエルに変身させられた王子様だったからだということにしたい。生で何かすごいものを観てしまうと、普段からこんなことをしていていいのかしら感を強くもっている私はそれが増幅されて、こんなことをしていてはいけないとかこんな風に生きていても仕方ないみたいな方向に流れてしまう。と、屋久島の名誉のために、もちろん屋久島の景色や屋久島の人々や屋久島での体験はわたしが知っている限りの地上の他のどこの土地とも比べられないほど素晴らしかった。レンタカーの迫田さんガイドの高田さんウミガメの大牟田さんに接客がすばらしかった食堂のいろいろな親切な人たち、ありがとうございます。たぶん屋久島に住んでしまうと、自然にはないネガティブな感情は湧き辛いのかもしれないなあ。とよそ者は心の底から羨ましく感じました。とか書いているうちにやはり書き残しておきたくなったので、一気呵成に一攫千金で書いてみる。
着いた瞬間から驚かされる汚れなき森と川と滝と海の洪水で、それはどこからどう切っても見飽きることのない景色ばかりだった。「屋久島は縄文杉を観る島ではない。」みたいなねじれた前知識を持っていってしまったのだけど朝の3時前に起きて夕方の4時頃に駐車場へ戻るまでの登山はガイドの方の導きで、縄文杉を観るためだけではないすてきな旅をすることができた。縄文杉の前で寝させてくれたこと、人のいない森の奥で眠らせてくれたこと、冷たい川に入らせてくれて自家製のお茶とケーきを食べさせてくれたこと、ありがとうございます。屋久島のおいしい食べ物屋さんと次の日から自力で行く白谷雲水峡や他のおすすめ場所を手書きの地図を書いて親切に教えてくれたこと、ありがとうございます。縄文杉までの長い道を歩きながら教えてくれたことで印象的なこと。ナウシカからゲド戦記までジブリの宮崎作品の背景の殆どは屋久島の森でできているらしい。屋久島にいる野性のほ乳類は6種類しかいない。そのうちコウモリ以外の全部に出会ったわたしたちは幸せものであるらしい。屋久島は岩の島なので最初はほ乳類はいない。川魚はいない。鹿は海を渡って猿は鹿に乗って来たらしい。料理屋「漁火」のご主人は奥さんを怒鳴るけど本当はやさしいらしいとかとかそんなことを書いていたら切りがない屋久島ミニ知識を教えてくれてありがとうございます。
屋久島の三日目は筋肉痛でぱんぱんな足で白谷雲水峡へ出かける。ここの「もののけの森」は宮崎駿タルコフスキーの世界のようだっていう感想はそもそもが逆でシャクだけど。どこか現実離れしている景色の連続だった。それからもウミガメの産卵や滝や湖や海中温泉や牛や白い浜をみたりして過す。そしてなによりも、こんな原生林の中に長くいると、生き物以外のものがそこかしこにいるのだということを確信してしまう。そんな有難い神々の地でも僕らの音楽くるり松尾スズキは自分の足を擦りながら見るのは忘れない。フジロックに行く時間とお金を作ることができる人であれば、それと同じくらいのお金で、まったくフジロック武装で出かけることができます。と、ここ数年フジロックのために一年、一年をぎりぎりの思いで過してきたような気がするわたしは、フジロックのことを横目で気にしながらも、行けるときは何度でも屋久島詣でを続けては、こんなわたしはどうでしょう。こんなわたしのダメさはどうでしょうと森に住むものたちへ問い続けたい。ちなみに上の写真は縄文杉の近くに鹿が現れたところ。下の写真は白谷雲水峡の先にある太鼓の岩。ここの岩陰で戯れあうカップル。このあとはなかなかすごいことに。そして屋久島といえば田口ランディばかりではなく、今が旬な森絵都さんもこんなのを出しています。

屋久島ジュウソウ

屋久島ジュウソウ

  
しかし、内容はあまりにもからっぽだった。特に屋久島が好きなひとにとってはがっかりすること必至。
とスペースと気力があまったので。