猫の中の人

飼い主に似たのか、痛みに異常に弱い猫はありったけの悲鳴とうんちとおしっこを出すだけ出して、無事に生還してきた。うちの猫に限っては日々何も考えないで生きているに思える。そして、広くない家なのに、どこにいるのかなかなか見つけられない。そういうときは、鳥の肉を片手にひらひらさせていると、どこからともなく飛んでくる。ただときに、空腹でないのかどんな食べ物でもつられないときがある。そういうときは、洗濯したての白いワイシャツを広げておくと、やがてやってきてシャツの上でごろごろしだす。そこで体を撫でてやるとゴロゴロ加減がさらに増して、喉元からモーター音のようなゴロゴロを聞かせてくれる。とそういうぷち相思相愛も恥ずかしいので、わたしもわざと猫が勝手にシャツに横たわるままほおっておくと、たいていシャツの上にゲロを吐かれる。それを洗ったり洗わなかったりしてわたしはそのシャツを着て会社に行く日は、少しだけ嬉しい。