童貞。をプロデュース

加賀君にくぎつけ。加賀君になりたい。というより加賀君の母親になって家族会議でこんな映画に出てしまってエと叱りながら嬉しがりたい。キャラが立つという言葉こそこの1と2の童貞主人公達のことだ。それにしても加賀君の格好よさ。自意識過剰と職業差別ぶり。そしてあのつるっとした顔とくねくねした体。灰皿を手前にビールを飲みつつイカを食べつつドリアン助川のラジオに出演したときのテープを聞かせるときのあらゆる動きの完璧さは本当に監督のキューも指示もなく素だとしたら天才だ。あのバッティングセンターでの動き。AV現場でのいやがり方も格好よかったけど、カンパニー松尾の「迷惑はかけるものだから」と加賀君にかける優しい言葉も格好いい。でもあの課長代理のような風貌で会社であんな言葉を言われたらグーで殴る。カメラを持ってますみちゃんに近づいたところで映画が終わるのも格好いい。エンディングで加賀君の作った歌を彼が歌うのもまた格好いい。まあとにかく何もかも加賀君映画。加賀君の今はなき童貞美学、自分は惨めじゃないのだと、彼よりも自分の方が彼女のことを愛しているのだと、風俗はきたないから行けないのだと、AV現場にいながらAVはきたないのだと、君の全ての穴にぼくのペニスを入れたいのだと歌い放つ、そんな全てのさまが格好いい。今の日本においてロマンを語る資格があるのは童貞だけだ。童貞2の冒頭で加賀君が童貞でなくなって女性と同棲していて、1のラストで彼が告白した彼女ともつきあったのだと。もうぼくは大人なんです。みたいな台詞でマジ落ち込んだわたしがいた。2の方はちょっと作り込みすぎているところにイロイロ思いつつも、根本敬が出てくるなと思いつつ約束どおり出てきてくれてラストに自家製アイドルアルバムを仲睦まじく眺める姿は可愛かった。そんな童貞映画に生きる勇気をいただいた。けど案の定、そんな勇気は無駄に終わりそうではあるのだけど。それにしてもそれにしても素敵な気持ちにさせてくれる美しい松江哲明監督映画「童貞。をプロデュース」でした。ごちそうさまでした。