人のセックスは笑います

Shipbuilding2008-02-17

施設に入所したわたしの父は最初のうちは、ここを出してくれと、俺が何か悪いことをしたのかと逃亡し続けていたのが、比較的落ち着いたというよりも、戻るべき家があることがわからなくなってきたこの頃だということで、外出をさせてみた。車で内気な犬に会わすと、わたしの呼び名になっていた犬の名前を正しく言って挨拶をしたが、車酔いをしている猫にはいまひとつ反応がなかった。そんな犬猫と相当なアルツハイマー人をひき連れて、小洒落た食堂に入るというなかなかのチャレンジをする。父親の食べこぼしに下で構える犬が後片付けをするというコンビネーションを気にしたり淡白なハッピーバースデイと感情が入りすぎてうなり声をあげてしまう部分だけがキースジャレット風だったピアノの弾き語りを気にかけたり子供の誕生祝いなのに本人がDSに夢中で父親がしょっちゅう携帯電話で席を外すたびに携帯メールをする母親を気にかけたりしながら、わたしは鳥のササミを車で待機する猫のためにとナプキンでくるんだ。ササミの入ったナプキンをしまう瞬間に、なんてわたしは、ここまで上手く生きているのだろうかと自画自賛した。そのあとに犬と父とテーブルとコーヒーとアイスクリームたちが合体して倒れることになっても、わたしのポケットに入っているササミの尊さが全てを打ち負かせてくれていた。