「最後のアジアパー伝」(小説じゃないけど)鴨志田穣・西原理恵子

日本の出版界には西原グループというものがあって、西原理恵子の友人であるというだけで、彼女のイラストがつくだけで、ある程度の部数が出てしまうという麻雀や放浪物って如何なものだろう。と、同じように西原理恵子の夫であった鴨志田穣の本も、敬遠をしていた。実際立ち読みで読む限りは、あのスカスカな文章と、圧倒的な迫力でそれでいて本文と関係ない西原理恵子のイラストが痛々しかったのかもしれない。それがどういうわけか、数日前に購入してしまい、まったくどういうわけか、一昨日にとり出して読み出したのも、西原理恵子鴨志田穣の最後の共著だという、その夫婦愛ぶりを読みたかったのだ。そして、読むにつれ、当然、本文とイラストは関係がないのだけど、そして具体的に別れるにいたった二人の出来事が書かれているのではないのだけど、書かれていないところから二人の濃い関係が、浮かび上がっている。これは、本当の意味では別れられないだろうな。などとかんがえていたら、そうだ。ハシダさんこと橋田信介さんの死をテレビで知った。ここでの橋田さんは、特に鴨志田穣から尊敬される人物として描かれているわけでもなく、失敗をしたり、共に酒を飲んで、女を追いかける、かわいくも普通な男として描かれる。だからこそ、ハシダさんの死が身近なよく知っている人の死として実感できた。
テレビから知らされる死は、たいていどこかフィルターがかかったものとして感じられるのだが、あの焼けただれた車や、事件の詳細な話を聞くたびに、残酷な殺人をリアルに感じられる。
「最後のアジアパー伝」は、相変わらず書き込みが足りなくてスカスカだし。素敵な素材があるのに、書ききれていないところがもどかしい。ボスニアに住む母へ娘から頼まれたプレゼントを渡す話。そのときの通訳がエイズでその母を連れてクロアチアまで行こうとする。と、確かにこの内容はテレビ朝日で見たような気がするけど、書きようによっては、読むものの心をうたせてくれそうなのに、最初から最後まで、一本調子で書かれている。ただ、最後の沖縄のアメリカ兵と物語は、あいかわらず収集がついていないようでも、とてもいい。それは、ここではじめて作者が自分をきちんと晒しているからかもしれない。
と、結局のところ、勝手に読むほうからすれば、書いている人の思いとは違うところで、印象的になってしまったというイラストつきの本。