舞城王太郎は女性作家である

ISBN:4104580015
とか、もう書いてしまうよ。三島賞の授賞式にも出ないという、徹底した覆面作家ぶり。そもそも、「煙か土か食い物」で賞をとったというのが、不思議だった。普通、って何が普通なのかわからないけど、一応、メフィスト賞だってミステリー小説の新人賞なのだからここらへんは下読みみたいなところで落とされるんじゃ?という危うい小説が大賞を受賞して、その後も順調に純文学へシシフトしたところで、あっというまに三島賞をとってしまった小説。
今まで舞城王太郎小説で、皮膚感覚的に、ゴソゴソとこそばゆい思いを感じていたのは、ミステリ小説としてのあまりな不合意性とか、死と生を深刻に描いているようであまりに表層的なところが、そう感じさせているのだろう。とか考えていたのだけど、そうではなくて、この人の書く、ぼくやおれの男文体に、ごわごわしてしまっただけなのではないだろうか。と、どんな作家でも、男には男文体があって女には女文体があって、それはどんなに似せて書いたとしてもわたしの目は偽れないわよ。と思っているのだけど。わたしの舞城王太郎アレルギーも、この前半分を読む限りは、全く感じなかった。今まで、リアルさを感じないごころか、不自然なアニメキャラのような男子達が、この愛子の登場をもって、はじめて、ありうる人として読むことが出来た。
死と生の間で起こる愛子の世界は面白いし。ミステリ小説のようにはじまって、全く無視していう到達点は素敵なのだけど。しかし、しかし。それでも、ここでも、この決着の仕方は何なんだろう。生の世界へ戻ってきてからの、いつものような教訓じみた到着点。これからは好きな子としか寝ないことにしよう。とか。なんか、づるい。そして、それが、ほんとに唐突なのだ。突然じゃあない、「唐突」って、英語でなんていうのだろう。いや、そんなことはどうでもいいよ。でも、こんなに「つーか」を使うことに惜しげもないというのは、逆に女ではないのか。いや、もしかして、小説と関係ない、どうでもいいことばかり考えているのか。わたしってば。