桐野夏生 「リアル・ワールド」ISBN:4087746194 人の死には軽重がある

桐野夏生の一筋縄ではいかない女性達模様というのは、女子高生を描いても健在。そして、OUT以来、主人公を勝手に作者とダブらせて読んでしまうわたしは、この小説の中の「取り返しのつかないことってあるんだよ」がストンと来た。ここで説明される「取り返しのつかないこと」というのは、人を殺すことのような単純なことではないと言う。そして、本物の取り返しのつかないこととは、永久に心の中に滞って、そのうち心が食べ尽くされてしまう恐ろしいことだという。桐野夏生という人は、本当に恐ろしいことを知っている人だ。
そしてこの女子高生を描いた小説は、堂々と「リアルワールド」に立ち向かう姿で終わっているところが最近の桐野夏生らしくない清々しさを味わえて嬉しい。