陰日向で君のためなら千回もセックスを笑うな

映画「陰日向に咲く」は本当に時間つぶしとして映画館に入ったとしか記憶がすでになく、「君のためなら千回でも」は、いったい何が千回なのかが気になって見に行ったが、なるほどな千回だった。ただ予告編をみたところでは想像できなかったリアルな暴行シーンに顔をひきつらせたりもしたのは、こちらが弱体化していたからか。それでも、凧を追いかけることを、物事の本質に例えたりするあたりに強引な少年映画としてのまとめ方が感じられてひと安心。それから「人のセックスを笑うな」は、なんか隅々まで可愛くて上手だった。撮影や音楽だけでなくて美術や小道具の隅々にまで永遠の乙女力を感じたり、永作博美の服の脱ぎ方や蒼井優の観覧車での「ばっかじゃないの」やあがた森魚信玄餅の説明やあれこれが心に残る。
が、もうそんな森美術館からあれこれの映画をも、母親と犬といっしょにテレビを見ながら「なんで東京マラソンに出なかったのか」と20回くらい聞かれて「抽選に外れたんだよ、わたしの人生でくじに当たったことは一度もないのだよ」と3回くらい説明したあとに何度も同じテレビに移った鳥居みゆきに日本の男子一同とともに心うたれる。GyaOで放送された鳥居みゆきと竹山のゴルファーとキャディーのショートコントは、日本のコント史60年来の金字塔だったと思う。しかしこんな時間帯に放送されたことで、また鳥居みゆきという芸人が短距離レースのスタートに立たされてしまったようなことをいろいろと心配するでもなくうとうとしながら。
本当に全てを打ち負かすのは、煎餅片手に横になって誰かといっしよにテレビを見れる気もちなのかもね。と、隣でわたしに夜食をねだる今はわたしと同じ名前になった犬を見ながら。