モリのアサガオ

わたしは小学校にあがったばかりのころにテレビで何かの死刑執行の場面を見て、ものすごい恐い物を見てしまったという記憶を引きずっている。どんな殺戮映画や、切り株ホラー映画よりも、死刑の現場を見ることこそリアルな殺人の現場を見てしまったことだから。と、同時に自分が死刑囚であったり、ときに死刑執行人であることをよく想像をしてみた。
この魂の交流だとか感動の嗚咽と言われるこの漫画について、誰も語っていないようなのでいいたいのは。アシスタント募集やその履歴書の書き方やアシスタントの方達の仲間落ちの漫画や作者がモリアサがBLでとりあげられて嬉しいだのは、ほんっとにいらないと思うよ。しかし、この漫画以外の部分も自分の周りのことを出さざるを得なくなる作者の、あの筆のタッチと几帳面すぎる画風も含めて、全てを出し切るのだという姿勢を感じて気持ちがいい。モリアサこねた集とか豆知識とかまであるのだけど、その中のAからQまでの登場人物を使った、死刑執行配置図は興味深すぎた。
実のところ、宣伝されているような、そしてBLで盛んに描かれているという主人公二人の魂の交流というものが、わたしには感じられなかった。ただ、この漫画の着地点についてどう思うかよりも、おそらく最初から決められていた最後の場面をよく書ききりましたね。と、この凝縮された7巻までの作業に母のような刑務官の気持ちになって、ご苦労さまと思う。そして、満の「復讐のために自分が死刑になる」という考えにはとても惹かれる。とてつもなく小さなレベルで、わたしの中の「復讐のために仕事をしない」とか、「復讐のために嫌われる」みたいな気持ちと勝手に同義とする。